三上のずいき祭

国指定「重要無形民俗文化財」

三上のずいき祭

10月 第2月曜日(体育の日)






















 三上のずいき祭は里芋の茎(くき)を用いて作った「ずいき神輿」を奉納することから、この名で親しまれています。古くは「若宮殿相撲御神事(わかみやどのすもうごしんじ)」と呼ばれ、相撲神事を主体としたお祭りで「ずいき神輿」の正面には土俵をつくり角力猿(すもうざる)の人形を飾ります。

 この祭りは長之屋(ちょうのや)、東座(ひがしざ)、西座(にしざ)の三つの宮座(祭祀組織)により行われ、祭の当番である頭人(とうにん)は各座二人が務めます。永禄4年(1561年)から今日まで当時の宮座が変わることなく維持され、その祭礼記録が残されております。その記録の冒頭に天文10年(1541年)から中断していた祭りを再興したことが記されており、470年以上の歴史と伝統を持つ祭りであります。

平成17年2月21日に国の「重要無形民俗文化財」に指定されました。

 祭りは10月9日から14日にかけそれぞれの神事が行われ、頭人はその間ご奉仕いたします。また頭人は「ずいき神輿」奉納のため、ずいき芋を丹精込めて育てます。

 なお、現在は10月14日の祭り当日を10月第2月曜日(体育の日・祝日)とし各々の神事日程もこれに合わせて順次行われます。

 

 

甘酒神事 〔献江鮭祭(あめのうおまつり)〕 (5日前)

 各頭人は御上神社に社参、酒、甘酒、めずし(タデずし)、青菜漬などを献饌。

 鯇(あめのうお)を社前に供え、神事の無事を祈願します。

 なお、一般の各家庭でも甘酒をいただきお祝いを致します。

 

湯立て式  (3日前)

 各頭人は早朝神社から宮水を頂き、自宅にて釜で湯を沸かします。

 神職が笹を使って釜の湯で屋敷の周囲を清め、神輿の上に立てる榊を床の間において神移しを行います。

 

ずいき刈り  (2日前)

 早朝より親戚・知人が集まって、神輿に用いる上質な芋茎を刈り取り洗って神輿づくりの準備をします。神輿の一部をも作り始めます。

 

 

 

 

 

 

ずいき刈り

お菓子盛り  〔献饌としてのずいき神輿づくり〕  (1日前)

 前日に引き続き神輿づくりをします。芋茎を適当な長さに切って神輿の胴、屋根、下り棟を付けます。これには高度な技術が必要であります。       

 屋根には粟と菜種を吹き付けた神紋を付け、胴部の正面には飾り棚を作り、粟で囲った土俵に角力猿の人形を置き、鳥居を建てます。

 他の三面にも造花をあしらった飾り棚を付けます。台座部は柿で根締めし、軒下部は紅白の神紋をつけ、台座四隅に鶏頭の花で染めた帆立を添え麻殻の松明を置きます。

 上部には湯立ての時に祀った榊を立て鶏頭の花でその周囲を飾ります。完成された神輿は座敷の中央に据えられ、それを囲んで祝宴を行います。

 

 

 

 

 

 

        お菓子盛り                  角力猿

頭渡し(とわたし)  (1日前)

 翌年の頭人を確認する儀式で、午後7時に頭人、翌年の頭人である介頭人(すけとうにん)、翌々年の其介頭人(そのすけとうにん)がそれぞれ提灯の明かりで宮座の公文(くもん)宅に集まり、杯を交わし引継を致します。

 これらの儀式は総て無言で厳粛に行われます。

 

ずいき祭  (10月 第2月曜日・午前11時~)

 午前10時、神社の太鼓の音を合図に各頭人宅から 「ずいき神輿」が出発します。

 警固(けいご)を先頭に頭人、親戚、知人、隣人などが行列して社頭に勢揃いし、拝殿の所定の場所に据えられ、祭儀が行われます。5基が揃った景観は見事なものであります。

 

 

 

 

 

 

 

 

ずいき神輿(楼門前)

芝原式  (10月 第2月曜日・午後7時~)

 芝原式は祭の夜、楼門前で行われます。

 午後6時、神社の太鼓の音で、各座当人は供人に酒、めずし、青菜、鮒鮨、花びら篭などを持たせ、提灯の明かりで社参、斎館に着座し沈黙の行をします。

 宮仕(みやじ)の準備完了のあいさつで総公文(そうくもん)を先頭に 宮司、公文、頭人、定使(じょうづかい)が神殿に向かってコの字型に着座し、かがり火と提灯の明かりで5つの所作が無言で厳粛に行われ、中世の宮座行事の姿を伝えるとともに、神との饗宴の古式を今に受け継いでいます。

 

1.差状を渡す

 頭渡しで引継が行われた来年の頭人の名前を記入した書付を各座公文から総公文に渡します。

 これで来年の頭人が確定したこととなります。

 

 

 

 

 

 

 

 

差状を渡す 

2.花びら餅を配る

 牛の舌の形をしているので「牛の舌餅」とも言われています。

 宮仕は饗盤(ごうばん)に載せた花びら餅を、青竹で編んだ花びら篭に入れ、各座の公文に配膳されます。

3、猿田彦の登場

 宮仕が、神と人との間をとりもつ神、猿田彦として鼻高面、つまり猿田彦の面をつけ、木鉾(きぼこ)を持って登場します。足を後ろに蹴り上げながら座の中心を3回廻って各公文のところで止まり、木鉾で突き鼻くそを放つ仕草をし公文はそれを受けて一礼します。

 この一連の所作は中世の「王の舞」の流れを汲む芸能と言われ、中世の神事芸能の名残をとどめると考えられます。

 

 

 

 

 

 

 

 

猿田彦

4、直 会

 続いて神と人とが酒を酌み交わす共食、直会に入ります。各座毎に各座の定使が給仕役を務めます。肴にめずし、青菜漬、するめ、東座のみ鮒鮨が出され、神酒を盃に注いで宴会が行われます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

直会

5、子供相撲

 力士は東座、西座それぞれ上下(かみしも)から小相撲1人、大相撲(青年)1人を出し、東西の上同士、下同士に分かれ4組の相撲をとります。

 大相撲は長いまわしを公文の使いが投げ、持っている刀でたぐり寄せて腰に巻き、刀を行司に預けてから相撲が始まります。これらの取組は勝負をつけず、お互いに「ヤア」「トウ」と掛け声と同時に腕を組み合わせるのみで、まさに相撲神事として奉納されます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

子供相撲

 

相撲を最後に一同斎館にもどり、芝原式は終わり、6日間に及ぶ「ずいき祭」も幕を閉じます。

 

 

たでずし(めずし)

 たでずしはずいき祭の神饌としてあるいは直会に使われます。主な材料は野洲川などの川辺に自生している たで(蓼)草を土用の最中に刈り取り、陰干しをして手早くもみ、粉にして保管します。すし飯は普通のすし味と同じようにして、ちりめんじゃこを酢と砂糖に混ぜてなじませ、少しご飯が 冷めた後、たでの粉末を振りかけて出来上がりです。ピリッと辛さの残る食感です。

 

 

 

 

 

 

 

 

たでずし